増加する荒廃森林

(1)荒廃する森林がもたらす影響
木々が生長し林内が過密になると間伐が必要になります。間伐を行うことにより林内に光が入り、木々が健全に育つとともに、下草(下層植物)が生え土壌が保全され森林の持つ公益的機能が発揮されます。しかしながら、間伐の対象となる人工林面積が133,786ha であるのに対して、過去10年間に間伐された人工林面積は73,591ha にとどまっています。(間伐はおおむね10年間に1回以上行うことが必要です)本県の森林については、林業採算性の悪化などを背景に間伐などの手入れの行き届かず荒廃した人工林が増加しつつあります。
間伐されず放置され荒廃した森林は、景観を悪化させるとともに、林内に光が入らず、下層植物が生育しないために雨が降ると林内の土壌が流出し、土壌の流失による保水機能が低下したり、また山崩れが起きやすくなります。そのため、土砂災害や洪水、渇水、また鳥獣の餌となる生物が少なくなることによる獣害の発生など、水利用などの生活環境への影響や農作物などに大きな影響を与えています。また、生活文化の変化により里山林の利用が少なくなり、管理が放棄された里山林の荒廃や、放置され荒廃する竹林、拡大する竹林による森林や農地への侵入問題が起きています。

(2)困難な森林の管理
かっての森林は、森林所有者による林業生産活動により、適切な施業が行われ、自ずと管理されてきました。しかし、近年では林業収益率の低下などから、森林施業への資金が不足するとともに施業意欲の減退を招き、放置される森林が増えています。また、集落周辺のいわゆる里山林では、自ずと適切な管理となっていた生活用途への利用がなされなくなり、放置され荒廃しています。
その影響は先述したとおりですが、今日の林業のおかれている状況や里山林の利用の変化を考えると、森林所有者や関係者のみの努力では、森林を健全な状態で管理をし続けるには困難な状況にあり、また、それを支える公的資金にも限界があります。

間伐


荒廃した森林の状況


現地調査(平成17年6月7日)

里山放置林での竹林侵入例
  (和歌山市花山温泉付近、野上町山林内)


花山温泉所有里山林では、広葉樹林に竹林が侵入している状況の中、ボランティアグループが竹林の整備を行っている。
また、野上町山林内では、道路に隣接した人工林内に竹林が侵入し、スギの生育を阻害している。

景観保全例~ススキ原の保全を参考~(野上町生石高原内)


県・町・地域住民・ボランティア団体等が協働によりススキ原の保全活動に取り組んでいる。
生石高原のススキ原の景観はは紀北地方の観光資源であり、その保全活動は、ススキ原特有の貴重な動植物の生息地の保全にも繋がる。
同様なことが、文化・景観保全のための森林整備にも言える。

間伐手入れ林例(野上町生石山林内)


間伐がされたことにより、下層植生が繁茂し、健全な森林の状態となっている。

間伐手入れ不足林例(野上町生石山林内)


本県に代表的な急傾斜地で、かつ間伐が行われていない森林である。
間伐が行われていないため、下層植生がなく、また落ち葉等の腐養層が少ないため、水の浸透能力が低く、表土流出の危険性も高い。
荒廃森林は、山地災害の危険性があり、地域全体の問題となる。


はじめに森林の有する公益的機能について森林・林業の現状等について増加する荒廃森林 森林整備への取組み県民参加による森林整備おわりに