平成17年12月定例会の「紀の国森づくり条例」、「紀の国森づくり基金条例」提案理由について

 提出者27名を代表して、議員提出議秦3号「紀の国森づくり税条例」ならびに4号「紀の国森づくり基金条例」について提案理由をご説明申し上げます。
 「空青し、山青し、海青し/日はかがやかに/南国の五月晴れこそゆたかなれ」と郷土の文豪佐藤春夫が詠んだ紀州の山々は、古くから温暖多雨の気候により、木々の成長がよく、豊かな森林が育まれ、森林を基盤として産業が栄えてきました。林業はもとより、農業や住民の生存そのものが、森林に支えられて、今に残る山村や里山の風景がかたちづくられ、その中で、筏流し、紀州備長炭、社叢林、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」などの「紀の国」の豊かな文化が生まれました。
 森林は、木材生産のほかにも、水源涵養、土砂流出防止、土砂崩壊防止、保健休養、野生鳥獣 保護や地球温暖化防止における二酸化炭素の吸収源などのいわゆる公益的機能をもっており、その恩恵は森林所有者だけではなく、広く県民全体に及んでいます。森林の公益的機能を林野庁の試算方法を用いて和歌山県にあてはめて推計したところ、なんと年額約1兆円と試算され、県民1人当たりた換算すると97万円程度にもなります。
 本県の森林面積は363,707haで、県土 給面積の77%を占めており、森林率は全国6位の森林県であります。また、民有林が森林の95%を占め、スギやとノキ等の人工林率は61%になっております。この人工林の多くは 昭和20年代に戦後の復興造林として始められ、続く30年代には林業経営と森林資仮の充実を目的として旺盛な拡大造林が行われたことによるものですが、人々は森林を木材生産活動の場として、あるいは、将来的に価値の上がる資産のひとつとして考えてきましたこそして森林の公益的 機能の発揮も、そうした自立的な経済活動の結果として当然のことのように考えられてきました。
 しかし山村の過疎化・高齢化の進行に加え、長期にわたる木材価格の低迷や労働力コストの増大などによって、採算上も担い手の確保のうえからも、林業は大変厳しい状況におかれており、多くの森林所有者が林業経営に対する意欲を失っています。天然林は人手をかけなくても健全な状態を保っていく力が備わっていますが、木材を効率的に生産することを目的とする人工林は、入手による管理が欠かせません。また集落周辺のいわゆる里山林では、生活用途への利用がされなくなり、放置され、竹林の増殖など森林環境の悪化を招いています。
 もはやこのような状況の中、森林所有者や関係者のみの努力では、森林を健全な状態で管理し続けるには困難であり、それを支える森林整備の公的資金にも限界があります。
 やはり森林の恩恵を享受している県民全体が、森林を県民共通の財産であると認識し、森林づくりを県民全体で取りくんでいくことが必要であると考えます。
 このような認識のもと、自由民主党県議団において平成16年10月森林環境税研究会メンバーを設置して研究を重ねた後本年4月に森林環尭税懇話会を発足し、各方面の代表者の皆さんに 議論を深めていただきました。そして8月19日に中間報告を、11月9日には最終報告をいただきました。
 その内容としては森林の現況や無題を把握し、森林の持つ多面的な機能の理解や県民参加による森林環境の整備のあり方について検討を重ねた結果、県民の皆様から「紀の国森づくり税として新たな負担をいただくことにより、本県の豊かな森林が県民共有の環境・文化資源として意識され、将来へ守り継がれていくことが必要との結論に至ったわけであります。
 また並行して議会各派の皆様とも議論を重ねてきました。
 その結果、税収自体を第一の目的とするものではなく、広く薄い負担で県民の皆様の関与や参加をお顧いする意味で、今般「紀の国森づくり税」の導入を提案するものであります。
 税のしくみは、広く公平に負担していただくために、また低所得者等へも配慮するため県民税均等割超過徴税方式を採用し、個人県民税均等割の超過税額を500円、法人県民税均等割の標準税率の5%相当額をお願いするものです。施行期間は時代の変化に対して見直しができるように平成18年4月から5年間とします。
 また紀の国森づくり税として収納した額から賦課徴収に要する費用を控除した額および寄付金を積み立てるため「紀の国森づくり基金」設置を提表するものであります。なお基金を運用するため基金運営委員会を設置し、「県民が知ること」、「県民が理解すること」、「県民が参画すること」を基本理念とし、公益性を重視し、和歌山らしい特色のある、新規事業などに使っていってもらいたいと思います。
 なお今向「紀の国森づくり税」を提案するにあたり、県当局に対して
 1.現行の政策、予算の配分をさらに森林整備に重点化すること。
 2.「企業の森」事業を無償貸与から一歩進めて所有をしてもらうようにすること。
 3.わかやま森林と緑の公社の経営改善の推進に努力すること。
 4木づかい社会の実現にさらに力を入れる。
ことを要請しておきます。


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