紀の国森づくり税と花粉症対策(概要)

                                         平成18年9月28日(木) 14:00~
                                               県議会第1・2委員会室

  ○自民党県議団研修会

  テーマ  「紀の国森づくり税と花粉症対策」

  講師   大阪医科大学付属病院長
         竹 中  洋 氏(耳鼻咽喉科教授)

  参加者  自民党和歌山県議団、県職員及び関係者

・スギ花粉症の方は日本中(本土)で40%位であり、その一番大きな理由は拡大造林で国土の35%がスギ、ヒノキになっている。

・花粉症が増えた原因は、花粉の飛散量の確実な増加。国産材の利用が減少し、発生源がいつも同じ場所となったこと。また、
 ディーゼルエンジンの排ガスにより、発症率が5倍から10倍に高まったというデータがある。2歳で発症した例もある。花粉症
 に対しては、治療法の開発が遅れている。

・花粉を多く飛ばすのは辺縁木(太陽を浴びる部分)と、孤立木(町中の神社や学校周 辺のスギ)。原因植物(風媒花)は、たくさ
 ん花粉を飛ばす。 花粉症の原因となるアレルゲンが非常に多く含まれ、受粉のための酵素がアレルギー の原因となる。花粉
 は、飛んでいる間に、アレルゲンの微粉末をたくさん飛ばす。

・近畿から関東地方までの調査(平成12年)で、ほぼ40%を超える人が花粉症と言 われている。 スギは、9齢級(41~4
 5年)から花粉を飛ばすが、このような人工林が増えている。昭和25年から拡大造林が起こったが、それ以前は日本のスギ、
 ヒノキの面積は大体 5分の1くらいと思われる。

・花粉症の発生要因は、1つは花粉があるという外因と、もう1つは免疫機能が働くという内因である。1人1人の免疫機能
 は内因として親からもらう能力であり、外因と内因が重ならないと花粉症にはならない。たぶん50%は超えない。疫学調
 査によると、例えばイギリスの枯草熱に関する調査で40%が発症している。アメリカでもこのくらいである。日本ではこ
 うした調査は無いが、大体13歳から 14歳の子供では20%位が花粉症であると考えられる。

・花粉症は、拡大造林でスギ花粉が増え、大量に曝露されたときに10代だった人で、30代から50代がピークになっている。
 最近の疫学調査から、スギの木が多く植え られているところの中年に多いようである。学童では年齢別に増えていくし、男
 性に多い。

・京都府の和束(ワツカ)町での調査では、結果的には14歳までの間に増える。 和歌山には14万人の0歳児から14歳児がいる
 が、14歳の子供は大体6割くらい が花粉症である。

・4月から9月生まれの子供は殆ど花粉症にならない。11月前後から2月に生まれた子供は倍くらい花粉症になる。 大量飛
 散年ごとにどんどん増えるが、完全に花粉症になりきるまでは複数年かかる。

・花粉がたくさん飛べば飛ぶほど、花粉症の子供が増える。さらにダニ陽性者は、明らかに高水準でスギ花粉症になる。

・税としての有効活用、花粉削減に有効な投資は森林に関する制御をどうするか、辺縁木の枝きりや学校や神社の孤立木の制御
 をすることでかなり違う。ただ、医療費における個人並びに自治体における花粉症治療費分担額の調整が全然なされていない。
 2005年では薬局と病院を合わせて6000億円ぐらいの花粉症の薬が使わているはずである。また、確実に地域と関係す
 るのは、母親または父親が花粉症で、花粉が多く飛散する所に住んでいるハイリスク児といわれる子供たちにきちっと手厚い
 看護を行うこ とである。

・税として有効利用を検討するために必要なデータは、行政が森林整備できる範囲、孤立木の抽出、間伐材の利用及び沿岸漁業
 への森林の影響などである。また、医療面では、花粉症の人がその時期陥るうつ傾向や社会活動の低下が回復するような、医
 療費の有効利用のモデルができるのであれば、そうした評価をするべきである。こうした評価は、QOL(キューオーエル)評
 価といい、欧米では、アレルギー疾患 全てに適用されている。

・医療費にトータル6000億円くらい使われているが、対策は薬だけである。