森林の有する公益的機能について

(1)森林の多様な機能について
森林は、木材生産のほかにも、水源かん養、土砂流出防止、土砂崩壊防止、保健休養、野生鳥獣保護などのいわゆる公益的機能を持っています。ここで公益的機能とは、その恩恵が森林所有者のみにとどまらず、広く他の人々にも及ぶような森林の多面的な機能をいいます。近年、森林は、地球温暖化防止との関係で二酸化炭素の吸収源として非常に注目を集めていますが、これもその中に含まれます。

(2)森林の公益的機能について
林野庁の試算方法を用いて本県で推計したところ、森林の公益的機能の評価額は、年額1兆359億円とされ、県民1人当たりに換算すると97万円程度となります。

森林の公益的機能評価額(年間)

機  能 全  国 和歌山県
水源かん養 27兆1,200億円 3,780億円
土砂流出防止 28兆2,600億円 3,156億円
土砂崩壊防止 8兆4,400億円 1,222億円
保健休養 2兆2,500億円 326億円
野生鳥獣保護 3兆7,800億円 776億円

大気保全

5兆1,400億円 1,099億円
合  計 74兆9,900億円 1兆0,359億円

(注)評価の手法については、水源かん養機能の場合は、森林の代わりに利水ダムをつくる費用として、土砂流出防止機能の場合は砂防ダムをつくる費用として、土砂崩壊防止機能の場合は山腹工事費用として、また、大気保全機能は、炭素固定装置による炭素回収費用や酸素をつくる装置による酸素供給費として算出している


あわせて、森林の多面的な公益的機能をよりわかりやすくするために、次の資料を示しておきます。

 【森林の多面的機能】

森林は、私たちに様々な恵みを与えてくれています。また、私たちの暮らしや環境に欠かせないものがあります。
水や空気、災害を防ぐこと、家づくりに使う木材、様々な生き物のすみか、地球温暖化を防ぐ二酸化炭素の吸収など。これらは健全な森林の働きによって得られるものです。
環境の時代といわれる21世紀は、これら森林の持つ働き(多面的機能)が十分に発揮されるような「森林づくり」を進めていかなければなりません。

○水源のかん養「水資源貯蔵、洪水緩和、水量調節、水質浄化」

森林の土壌はスポンジのように隙間がたくさんある構造になっています。森林に降った雨はすぐに川に流れ込まずに地中にしみこみ、ゆっくりと川に流れ込むことから、豪雨時の洪水を防いでくれます。また、雨水が森林の土壌を通過することにより、水質が中和されてミネラルが増え、おいしい水がつくられます。

○県土の保全
「表面浸食防止、表層崩壊防止、その他土砂災害防止、雪崩防止、防風、防雪」

森林の土壌は、落ち葉や下草に覆われています。雨が土壌表面にぶつかった時、この落ち葉や下草が土砂の飛散を防いでいます。また樹木の根は地中に広く深く伸び、岩の亀裂にまで入り込みます。土壌と岩盤との境界を、根がしっかりと固定しているので山崩れが起こりにくくなります。

○地球温暖化の防止「二酸化炭素の吸収、化石燃料に替わる資源」

森林は光合成により二酸化炭素を吸収し、炭素を固定して、地球の温暖化防止に重要な役割を果たしています。日本の森林が、光合成によって吸収する二酸化炭素は年間約1億トンで、これは国内の二酸化炭素排出量の8%、国内の全自家用乗用車の排出する量の7割に相当します。
また、木材の利用も地球温暖化防止に貢献しています。木造住宅は第2の森林ともいうように、住宅1棟(床面積136m2)を建設する時に必要な材料の製造にかかるエネルギー消費から、放出される炭素の量を試算すると、木造住宅は鉄骨プレハブ造、RC造住宅のそれぞれ1/3、1/4の炭素放出量です。また住宅などに利用することで炭素を長期間保存することとなり、大気への二酸化炭素の放出を少なくするという役割を果たしています。

○自然環境の保全「遺伝子保全、生物種保全、生態系保全」

日本の森林は、約200種の鳥類、2万種の昆虫類をはじめとする多種多様な野生動植物の生息・生育の場となっており、遺伝子や生物種、生態系を保全しています。

○公衆の保健「療養、保養、レクリエーション」

森林は、フィトンチッドに代表される樹木からの揮発性物質により、ストレスホルモンの減少、脈拍数の安定などの健康増進効果が得られます。
また森林浴、ハイキング、キャンプなどの野外レクリエーション利用を通して、人々に安らぎを与え、心身の緊張をほぐす保健休養の場としても大切な存在となっています。

○木材等の林産物の供給「木材、食料、工業、工芸材料等」

森林は、環境に優しい資材である木材の生産のほか、木炭、パルプ、山菜、きのこなどを提供しています。
また、森林は伐ったら植えるという適切な施業を行うことで、何度でも再生することができます。そのため森林から生産される木材を循環利用していくことは、地球温暖化防止に役立ちます。


はじめに森林の有する公益的機能について森林・林業の現状等について増加する荒廃森林 森林整備への取組み県民参加による森林整備おわりに