増加する荒廃森林
目次
(1)荒廃する森林がもたらす影響
木々が成長し林内が過密になると間伐が必要になります。間伐を行うことにより 林内に光が入り、木々が健全に育つとともに、下草(下層植物)により土壌が保全さ れ森林の持つ公益的機能が発揮されます。しかしながら、本県の森林については、林業採算性の悪化などを背景に間伐などの手入れが行き届かず、荒廃した人工林が増加しつつあります。
間伐されずに放置され荒廃した森林は、雨が降ると林内の土壌が流出し、保水機能が低下したり、また山崩れが起きやすくなるとともに、見通しも悪く、景観も悪化します。
また、竹林の拡大に代表されるように手入れの行き届かない里山林が増えています。そのような地域では、シカやイノシシなどの獣害も多くなります。
(2)困難さが増す森林の管理
かっての森林は、森林所有者による林業生産活動により、適切な施業が行われ、管理されてきました。しかし、近年では林業収益率の低下などから、森林施業への資金が不足するとともに施業意欲の減退を招き、放置される森林が増えています。
また、集落周辺のいわゆる里山林では、生活用途への利用がされなくなり、放置され森林環境の悪化を招いています。
今日の林業のおかれている状況や里山林の利用の変化を考えると、森林所有者や関係者のみの努力では、森林を健全な状態で管理し続けるには困難な状況にあり、また、それを支える公的資金にも限界があります。
荒廃した森林の状況
現地調査(平成17年6月7日)
里山放置林での竹林侵入例(和歌山市花山温泉付近、野上町山林内)
和歌山市の里山林では、竹林に侵入された広葉樹林の整備ををボランティア団体が行っています。
また、野上町山林内では、道路に隣接した人工林内に竹林が侵入し、スギの生育を阻害しています。
景観保全例~ススキ原の保全を参考~(野上町生石高原内)
生石高原のススキ原の景観は、紀北地方の秀れた観光資源であり、その保全活動は、ススキ原特有の貴重な動植物の生息地の保全にも繋がることから、県・町・地域住民・ボランティア団体等が協働によりススキ原の保全活動に取り組んでいます。
同様な事例が県下各地にみられ、文化・景観保全のための森林整備が必要になっています。
間伐手入れ林例(野上町生石山林内)
間伐がされたことにより、下層植生が繁茂し、健全な森林の状態となっています。
間伐手入れ不足林例(野上町生石山林内)
本県によく見られる急傾斜地で、かつ間伐が行われていない森林です。
間伐が行われていないため、下層植生がなく、また落ち葉等の腐植層が少ないため、水の浸透能力が低く、表土流出の危険性も高くなります。
荒廃森林は、山地災害の危険性があり、地域全体の問題となります。
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